犬をめぐる裁判/ラフェットの備忘録

昔、一回だけ読んで、その後忘れてたんだけど、時々緒思い出してはネットで探して読み直す文章。とても好きなので引用させてもらいます。

「ラフェットの備忘録」より「犬をめぐる裁判」
http://blogs.dion.ne.jp/f081026/archives/10135090.html

ベストは心をこめて次のように語った。

陪審員のみなさん。
この世の中では親友でさえあなたを裏切り、敵となることがある。
愛情こめて育てた息子や娘も、深い親の恩をすっかり忘れてしまうかもしれない。
あなたが心から信頼している、もっとも身近な愛する人もその忠節を翻(ひるがえ)すかもしれない。
富はいつか失われるかもしれない。もっとも必要とするときにあなたの手にあるとはかぎらない。
名声はたったひとつの思慮に欠けた行為によって、瞬時に地に墜ちてしまうこともある。
成功に輝いているときにはひざまずいて敬ってくれた者が、失敗の暗雲があなたの頭上を翳(かげ)らせた途端に豹変し、悪意の石つぶてを投げつけるかもしれない。
こんな利己的な世の中で、決して裏切らない、恩知らずでも不誠実でもない、絶対不変の唯一の友はあなたの犬です。

あなたの犬は富めるときも貧しきときも、健やかなるときも病めるときも、つねにあなたを助ける。
冷たい風が吹きつけ、雪が激しく降るときも、主人のそばならば冷たい土の上で眠るだろう。
与えるべき食物が何ひとつなくても、手を差し伸べればキスしてくれ、世間の荒波に揉まれた傷や痛手を優しく舐めてくれるだろう。
犬は貧しい民の眠りを、まるで王子の眠りのごとく守ってくれる。

友がひとり残らずあなたを見捨て立ち去っても、犬は見捨てはしない。
富を失い、名誉が地に墜ちても、犬はあたかも日々天空を旅する太陽のごとく、変わることなくあなたを愛する。
たとえ運命によって、あなたが友も住む家もない地の果てへ追いやられても、忠実な犬は、ともにあること以外何も望まず、あなたを危険から守り敵と戦う。

すべての終わりがきて、死があなたを抱き取り、骸(むくろ)が冷たい土の下に葬られるとき、人々が立ち去った墓の傍らには、前脚の間に頭を垂れた気高い犬がいる。

その目は悲しみに曇りながらも、油断なくあたりを見まわし、死者に対してさえも忠実さと真実に満ちている。

また、ジョージ・グレアム・ベストのWikipedia(en)
George Graham Vest
http://en.wikipedia.org/wiki/George_Graham_Vest