コクリコ坂から

コクリコ坂から サウンドトラック
NHKで宮崎親子のドキュメントが有って興味がわいて観賞。この辺りの時代描写はジブリが得意そうだなあという先入観の通り、丁寧でエネルギッシュな街と人達がまぶしくって、元気をくれる。

主人公を取り巻く登場人物も、一生懸命さが伝わってくるけど、少し毒が足りないかな?見てる途中で、「これは吾郎版の『耳をすませば』かな?」と思ったのだけど、あの作品より人物があっさりしていた。

何と言うか、演出とストーリーのバランスが宮崎駿が監督した作品よりストーリー寄りになっている。演出の力が足りないと言うか、ストーリーが詰め込みすぎと言うか。最近のジブリにしては、背景の理解に努力を要する作品だし、その意味でも演出が負うべきパートが多すぎたかも。学生闘争とか朝鮮戦争後のドサクサや旗旒信号なんかね。
勿論、分からないでも楽しめるように作られてるんだろうけど、単なる建物取り壊しドタバタ劇として観せるんじゃもったいない。

あの時代は、太平洋戦争の終わり/朝鮮戦争での好景気/激しい学生運動、と大人から子供まで希望/不安と情熱に溢れていた訳だし、それに飲み込まれそうになる主人公たちの個人的な悲劇、と言う対比もあったはず。でも、作品としては恋愛/出生/建物と軸が随分多くて、演出では説明し切れていなかった。結果的にキャラクターがテンプレートから一歩進めていなかった。

これを、脚本の駿と、監督の吾郎の製作者としての力量の違いが出たのかな、と思うのは穿ちすぎかも知れない。ただ、駿が監督をやっていたなら、出生に掛かるストーリーは思い切って切り捨てて、塩味は他の部分で揃えたかもなあ、と想像もしてしまう。

とは言え、決してつまらなかった訳ではないし、背景が理解できない人もあの空気感を味わいながら二人の恋愛を楽しむだけでも面白いですよ。
それと、カルチェ・ラタンの千と千尋的ワクワク間はとても良かったので、あそこは掘り下げて欲しかったな。

【お勧め】★★★☆☆(吾郎はやればできる子!って分かったのは収穫)