たんぽぽ娘 海外ロマンチックSF傑作選2

たんぽぽ娘「SFは現代のお伽話だ」という言い方があります(多分)。お伽噺に出てくる魔法もSFの超技術も、ストーリーを破綻なくドライブする道具であることは変わらない、とかそんな感じの話ですね。なので、お伽話に恋愛が良く似合うように、SFにも恋愛は良く似合うのです。SFと言えばサイバーパンクだったり荒廃した未来都市だったりして、ちょっと馴染みにくそうではありますけど、そんな事は無くってアルジャーノンも夏への扉も恋愛の話だと(僕は)思っています。
そんな訳で海外の恋愛に絡んだSFを纏めたこの本。傑作選だけあって外れの無い作品ぞろいでした。特に好きなのは表題作の「たんぽぽ娘」と「チャリティからのメッセージ」かな。どちらもSFの定番である時間に絡んだ小さな話です。特に「たんぽぽ娘」のまさにロマンチック、古典的でとてもとても優しい理想の風景の描写は、まさか男性が書いたとは思えないような素晴らしい文章でした。色のついた風景があっとゆーまに心の上で再現されるような感じ、と言えば良いのかな。「チャリティからのメッセージ」も今ではありふれたフックの使われ方ですけど、逆に言えば今に至るまで使われ続ける程、良く出来た構成なんでしょうね。オチは読めるけど、良い物は良いのよ。
惜しむらくはこの本は絶版で、今では本当に手に入れにくいのですよね。古本屋で見つけたら是非、手に取って見てください。きっと気に入ります。
【お勧め】★★★★☆
追記:あの安田均も翻訳してた。やー。思わぬ(思わぬって事も無いけど)出会いだなぁ。