ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ:滝本竜彦

ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ (角川文庫)「幸せな時は不思議な力に守られているとも気付かずに」なんて言葉もありますが、実際に後から考えてみれば、幸せはホンの一瞬にしか感じられず、結局最後には何も残らないし、誰も僕の幸せなんか守ってくれないのだ、なんて感じてしまう時もあると思うのです。愛する人は(物理的/心理的に)遠くへ言ってしまうし、最高の環境だと思っても、それは変わってしまう事"しか"なくて、それは永遠を求める甘えた気持ちの発露ではあるのだけど、真実の一端でもあります。理想は遠くにありて思うもの、なのでしょう。
この本の登場人物たちも自らのやり方で、本当に人それぞれな方法ですけど、それと対峙し続けています。そう言った敵の隠喩でありながら、異常に直接的なチェーンソー男は一つの救いです。人によってはもがいていても「ソレが何であるか」さえ判らない人が大勢なこの世界において、立ちはだかるかのように戦いを挑んでくるのですから。
実は戦う事こそが生きると言う事で「幸せな状態」と言うのは、一種のご褒美でしか無いと思うのです。例えレースで一等をとっても、次はもっと難しいレースが続くだけ、それを受け入れる事が出来るか、もしくは気付いてしまうのか、それが分かれ道なのかも知れません。
とかまー細かい事を考えなくても、普通の青年の恋と友情(これらはひっくるめて「ゆーじょー」と呼びましょう)の話としても面白いです。
【お勧め】★★★☆☆(NHKの方が纏まりは良いかな?3.5点)