ゲイルズバーグの春を愛す:ジャック・フィニィ

SFとお伽話は紙一重みたいな所があるので、こういうロマンチックなSFというのは字面から感じる違和感ほどは受け入れにくいものではなくて、どちらかというと優しいワクワク感を感じられる分、得難いものだと思います。この短編集から出てくる望郷、もしくは「もう一つの選択」への強い願いは基本的に後ろ向きな物ですが、しかし全ての人の中にある物だと思います。過去が未来へ干渉する「ゲイルズバーグの春を愛す」や2つの可能性の未来を行き来するムシの良い話である「コイン・コレクション」など、「こうであって欲しかった」という感情は人の心を捉えるのです。
僕はSFとは言えないかも知れませんけど「大胆不敵な気球乗り」が一番のお気に入りですね。フィニィがこの話で書きたかったのは、難しい感情や驚きなんかじゃなく、ただただ空を飛ぶ事の気持ち良さや、空自体を求める渇望の感情だと思います。一緒に飛んでいる気持ちになれました。
【お勧め】★★★☆☆(本当は3.5点。面白かった)
ISBN:4150200262