世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド(上)(下):村上春樹

世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)海辺のカフカと同じように2つの話が重なるように進んで行く手法が好きなんでしょうか?一緒に記述される事の利点が良くわかりませんが。僕は面白いのですけど、イマイチ主題を読み取る事が出来ませんでした。主人公の彼が自らの世界を獲得するまでの込み入った話、のような気もしますが「世界の終わり」の影やそれらが示す事もちょっと理解し難い。
人は願いや希望を、つまり心を捨てれば安らかに生きる事が出来る、という事はこの世の中でも言える事だとは思います。だけどそれでは人は生きているとは言えない、と。自らの主体は自分であると強く願い、何を失っても(影や、残りの人生さえ)、それを突き通すことこそ生きる事なのでしょうか。
海辺のカフカに比べて話が断片化されてしまっているのが気になりました。その、主題を装飾する幾つかのテーマのブレ、と言うか。あと今回も井戸が出てきましたね。なんで?イド?
【お勧め】★★★☆☆(ちゃんと読み応えはありました)