風まかせ写真館:椎名誠

風まかせ写真館 (朝日文庫)椎名誠のライフワークになりつつある写真について、まとめた本です。彼の写真と言うのは彼のエッセイから毒と悲しみを抜いたような感じになっていて、つまりは温かみだとか今、生きている郷愁のような物を強く感じさせます。椎名誠も本の中で自分の作品を「写真日記」と呼んでいますが、本当にそんな感じで、他の見る者を圧倒するような構図や色彩の強さがあるわけではないのだけど、でも惹かれてしまう。彼の写真には親しみの持てる優しい魅力が詰まっていると思います。この本は、写真について短い文章が添えられていますが、それはつまらない撮影状況説明に留まっては居ません。椎名誠の本職の力を持って、さらに写真と見る者の距離を近づける装置として有効に働いているのです。素晴らしい。
【お勧め】★★★☆☆(さらさらと読んで欲しい)