本当の戦争の話をしよう:ティム・オブライエン(訳:村上春樹)

本当の戦争の話をしよう (文春文庫)これは戦争小説の形を借りた青春小説、またはシニカルな近代民話です。この本の中で自分が感じた事を大げさに表現する兵士の話があり、これは非常に共感したと言うか、勿論嘘のように事実を歪める事は褒められた事ではないです。しかし、人間が言葉を使用して気持ちを伝える以上、言葉が聞き手の中でどのような化学反応を起こし、どのような感情を引き上げるのかは推測するしか無い訳です。そう言った本質的に不確定な状況の中であって、それでもなお自分の気持ちを完全に伝えたいと欲するなら、この兵士のようになるのも頷けます。自分の感じた感覚を相手の中にも作り出したかった。それだけの話なのです。
それと戦争のようなファンタジックな状況では、自分と現実を結びつけてくれる印が必要なのかも知れません。それは悪態であって、タフな自分と言う自身であって、そして聖書であり、ストッキングなのでしょう。
【お勧め】★★★☆☆(村上春樹が好きな理由が良くわかります)