アンダーグラウンド:村上春樹

アンダーグラウンド (講談社文庫)僕は村上春樹の活動の全てを知っている訳ではないのですが、割と珍しい地下鉄サリン被害者のインタビュー集です。それも扇情的なマスコミ視点を極力排し、淡々と進む日常から事件に巻き込まれた(と言っても当時は本人にその意識は無い事が多かった)人々の一般市民としての純粋な意識を切り取ろうとした、かなり珍しい類いの本です。
僕は一定の視点を持たず、可能な限りフラットな態度で小さなメッセージを拾い続けた作者の態度は賞賛されるべきだと思いますし、それが商業主義では受け入れられないスタイルであっても、誰かが担うべきものだと考えています。

僕も地下鉄を毎日使用する生活をしています。また最寄り駅の路線は事件の舞台となっています。当時の僕はまだ東京に住んでおらず、気分としては遠い国で大きな事故が起きたんだなぁ、としか思っていませんでしたが、この本によって日常としての視点を得る事が出来ました。この本は単なるインタビューではありますが、学ぶべき事は沢山ある本でもあります。
【お勧め】★★★★☆(年に一回くらいはこんな本を読みたい)