マルタの碑:秋月達郎

マルタの碑―日本海軍地中海を制す (祥伝社文庫)時は第一次世界大戦。地中海で連合軍輸送船を護衛する艦隊。それは日英同盟に従い日本から派遣された、日本海軍の駆逐艦巡洋艦だったのです。歴史の教科書では触れられない遠き地での活躍を、この本では若き日の山口多聞を通して描かれています。この本は史実を元にした小説として書かれていて、全てが事実と言う訳ではないです。だけど、一本の小説として読んでも素晴らしいと思います。世界の動向から主人公の青春までを丁寧に書かれていて、なおかつ当時の対潜水艦戦闘や艦船生活も臨場感たっぷりで素晴らしいです。
また、日本海軍に関する小説となると普通は、太平洋戦争当初の勝ち戦、あとは敗走に次ぐ敗走となりがちです。しかしこの本ではドイツ海軍のUボートを相手に一進一退の戦いを見せ、非常にその描写だけでも読む価値があると思います。欧州から見れば地球の反対側にある国の田舎侍が、異境の地を舞台に守護神として奮闘する、しかもそれが若き日の山口多聞なんですから、面白くない訳が無い。
【お勧め】★★★★☆(日本海軍にわずかでも興味が有れば★5つです!)