昭和戦後史の死角:保坂正康

昭和戦後史の死角 (朝日文庫)
保坂正康による現在と昭和史を結んだエッセイと言って良いでしょうか。エッセイと言うには重みと実感がありますが、それほど深くはない、幾つかの読み物をまとめた本です。特に心に残ったのは「特攻作戦に反対した海軍軍人」と言う項です。次第に敗戦の色が濃くなり、海軍をしてあらゆる航空機での特攻作戦が勧められようとした時、抗命罪(軍隊において命令に抗う罪)になるかも知れないと考えながらこの作戦に反対し、最後まで熟達した兵員での通常攻撃を敢行した中佐の話です。彼は別に生命賛美だとかそう言った意味で特攻に反対している訳では有りません。アメリカ軍の防衛網の規模を考えると、碌に航空機の操縦も出来ない新人を、敵軍に比べて大きく性能が劣る機体に乗せて特攻を掛けた所で、無駄死だと主張したのです。
上記のような話を初め、それだけで一冊の本になる様なエピソードを、今と言う時代と絡めて書いていて、中々興味深く読めると思います。
【お勧め】★★★☆☆(教育関連の記述も良いです)